最近本店に新人さんが入社しましたが、彼女たちを見て思うことがあります。
それは「新しい環境で新しいことを習得するのはとても時間がかかる」ということです。
当たり前のことなんですが、ここしばらくベテランスタッフさん達に囲まれていたため、すっかりそのことを忘れてしまっていたのです。
筆者はつるやクリーニングの4代目として承継してから6月1日で10年経ちましたが、振り返ると、会社をどう動かしていけばいいのか、最初は全くわからずにいました。
代表者になるというのは自分から志願したわけではなく、最初は義父からの後押しがありました。
それは私が先代の父に一番近いところにいた血の濃さというのもありますが、もう一つ言われたこととしては、私には欲がないのが良いのだそうです。
そうかな??とも思いましたが、具体的に考えると元々物欲が少なく、執着心がないほうです。
会社としては縮小・整理していくステージだとは思っていたので、自分のそういう資質とは合っていたのかもしれません。逆に成長させるステージに入れば、欲深さも必要になると思いますが。役目として、一生に一回は代表というものを経験してみるのもいいかな、と思ってから10年経ちました。
事業計画書も10年前には作ったことがないので、最初はノートに思いつくままを書き始めました。
個人的には、染色やカフェ的なもの、古着やリメイクのような要素がクリーニングの中にあったほうがいいとは思いました。しかし、感性を生かした事業というものがどのくらいのスピードで進むのかその当時では今よりも読めず、
それよりも店舗のスペックを上げることのほうがお客様から見てわかりやすく、また短期間で導入でき(もちろんそれなりの資金は必要ですが)、実際に使い勝手の良い、地域にとって必要とされる店づくりが出来るのではないか、と考えを切り替えました。
また自社工場のため職人が不在になると仕事が成り立ちません。最初からクリーニング職人として腕を磨くことにもトライしましたが、これもとにかく時間がかかります。一通りを覚えるだけなら大雑把にみて一年ですが、クリーニングの仕上げということになると「目利き」が必要となり、意外と簡単ではないとわかりました。わかると出来るは違うのですね。また洗いの技術についても同様でした。
ただ、技術にかける時間が長すぎると、時代感を失うように感じました。
技術的な訓練もしながら、経営理念の作成やサービスの変更、店舗設備の変更として24時間受け取りBOXやクラウド対応POSレジ、電子マネー端末の導入、リサイクルの仕組み構築を、社内の抵抗に合いながらも進めていきました。
他にも検討していたサービスというのも存在しましたが、実際に導入できるかを検討していった上で、今提供しているサービスに絞りこんでいきました。
また、当時社員は店舗工場合わせて現在の5倍の人数がいて理解度にも個人差があり、場合によってはサービスや仕組みの導入にかなり時間がかかったりして、不安になるケースも多々ありました。
工場の中の話なら、大きい機械の買い替えを覚えている限りざっと8台は行なってますし、メンテナンス費も継続的に必要となるため、クリーニング屋が事業を継続することの大変さをここでも理解しました。
また人の流動を見て生産ラインの組み換えも幾度となく行ない、使わない機械の搬出も行なったりして、内容的にはだいぶスリム化したと思います。
10年経ったとはいえまだ途中経過にはいますが、30代のうちにある程度自分が描いていた計画を進められたことが今の自分を助けてくれてる、と最近実感することがとても多いです。
細かい誤差や修正、改善が必要なところもまだあるものの、会社全体の規模感としては計画していた通り5分の1に縮小させることができ、本店については10年前の2倍のスタッフ数となり、みんな頑張ってくれています。
今現在の店舗や会社の状況としては、今まで詰め混みすぎてしまったものを整理整頓整備しているところで、もう少し磨きながら削ぎ落としていきたいと考えているところです。
そのあとにまた、次のステージへ向かいたいと思います。
(写真:鎌倉・長谷寺の紫陽花)